拾い上げて





気づいた時には、もう無かった。
何か分からないけれど、とても大切なもの、だったと思う。
少し前までは確かにあったはずなのに、今はもう無い。
今来た道を戻って、さがす事もできる。
だが、足は前へと進んでいく。





本当に、大切だったのだろうか。
引き返すこともしない自分にそれを持っている資格があったのか。
忘れてしまうと言う事は、たいした事ないのだと、言い聞かせるのは簡単で。
このぽっかりと胸に穴が開いたような感覚は気の所為なのだと思える。
けれど。






「銀さんっ」






引き返すことのできなかった、その道を俺は振り返る。
走ってくる、
俺の失くしたものを手にしている彼。






抱きしめて、説明し難いこの気持ちを君に伝えたい衝動に駆られた。














昔なくしたものを振り返ったとき。