息をするように




僕じゃあ駄目だったんですよね、と流れ届いた言葉に意識を向ける。
何が駄目なのか、どう駄目なのか誰に向けていっているのか言葉だけでは分からないだろうけど、
いくら自分がそういうたぐいに鈍いといっても分かってしまった。
遠くに消えていく二つの背中をぼんやりと見つめながら、
ああ、きっと彼は家に帰って声を押し殺しながらそれでも盛大に一人泣くのだろうと勝手な推測していた。
ちらりと新八を見ると、泣きたそうにしながらも涙を堪えるような顔をしている。
視線に気づいた彼は、ぐっと眉に力を入れ涙を堪えながら健気にも笑って見せた。
なぜ今彼が悲しい思いをし涙を必死で堪えているのか。
俺の頭の中を探してみても掛けるべき言葉が見つからない。
健気にも笑ってみせるけれど、その肩は震えている。


何かに突き動かされているようだった、嫌々ではなく言葉を考えたわけでもなく
まるでそれが決まっていたみたいに。
気がつくと俺は浅い息と共に言葉を自然と発していた。


「俺じゃ駄目なのかィ」


その言葉は先ほどの新八の言葉と似ていたが全く違うものだった。
彼の言葉は認識と諦めの言葉だったけど、自分のは問いを含んでいる。
お互いに予想外だった言葉に顔を見合わせながら、新八は目を丸くして、俺は目をしばたかせた。
新八が問いの意味をゆっくりと理解して、驚いて息を飲み込み、顔色を変え、目を見開くと同時に、
俺は呼吸と思考を繰り返し直感的に理解する。
自分が、一つの恋が終わった彼の姿にひどく揺さぶられている。
一時的な同情や保護欲と言ってしまえばそれまでだが、違うと言い切れるくらいに直感した。
それは自然に、以前からそうであるのが当然のように、
まるで
日常動作の続きのように、
―――落ちる。



俺は気づく。自分が、恋に落ちたことに。
あるいは以前から落ちていたことに。







○○←新八+沖田
お通ちゃんか、それとも他の誰かを思っていた新八。