| ずっと、欲しいものがあった。 此処しかいらない 買い物からの帰り道、 見覚えのある後ろ姿に、口元が緩んだ。 だらだらとだるそうに歩く、後姿。 癖のある銀色の髪をボリボリとかきながら。 驚かせようと彼の背後へ早足で、音を立てないように駆け寄る。 我ながら面白い事をしようとしていると思うと、わくわくした。 手を伸ばした。 肩を叩くはずだった。 彼が振り向いたりしなければ。 伸ばした手が直撃して痛かったのか、彼が両手で顔を覆う。 「ってぇー、何すんだよ新八ー」 「すごいタイミングで振り返るんだもんなぁー・・・」 笑いの神様でもついているのだろうか。 このタイミングで振り返るとは、予想外のことだった。 「なんか後ろにいる気がしたんだよ、お前」 「あれ、銀さん本当に霊感あったんですか?」 「いや、いや、いや、変な事言わないでよ、新ちゃん。 お前だよ、お前がいると思ったんだよ」 霊感は無い、と続けた言葉は耳に入らなかった。 僕が後ろにいると思ったから、彼は振り返った。 その事実を素直に喜ぶ自分に内心で苦笑する。 「なんか甘いもんでも食いにいかねぇ?新ちゃん」 「そうですね」 お、めずらしい。と彼は大げさに驚いていた。 今日だけですからね、と釘を刺すことも忘れずにして、 僕達は並んで歩いて帰る。 居場所が欲しかった。 初めはそれだけだったかもしれない。 でも。 今は此処しかない。 此処しか、いらない。 |
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