呼吸困難




愛だとか恋だとか、そんなものは苦手というより嫌悪の対象でしかなかった。
そんなことに狂うより、自分にはやらなくてはならない事があったし
恋に溺れればみな一様に馬鹿になるのだ。
不確定な気持ちに振り回されて自分を見失ってしまう。
自分が弱くなり、捕らえられ動けなくなってしまうことがなによりも嫌だった。
形のないそれは不確実で確かめようにも脆くはかなかったからだ。
じゃあなんで今この自分の腕の中に温もりがある?
自分のとった行動をどうだと問われれば、死にたいくらい
愚かな行為だと言うよりほかならなかった。


「・・・土方さん」
「・・・」
「土方さん」
「・・・うるせぇ」


手のひらから腕から胸から、伝わり溶ける熱は自分のものではなかった。
その他人の熱に自分は酔っている。
脈拍は安定せず、眩暈さえしてくる始末。
こくこくと何者かに心臓を握りこまれ、絶えず圧迫される。
呼吸は乱れ、どうやって息をしていたのかすら思い出せない。
苦しい、痛い。
なのにそれは決して不快な感情ではなかった。
やわらかく小さな体は自分の体に隙間なくぴったりとおさまってしまっている。
そのまま境目もなくなって、一つのものになればいい。
ああ、


「・・・新八」




愚かだと笑ってくれ。








武士っぽく?
不器用な男の恋の始まり?(聞くな)