好きで潰れそうだ。




自分よりも少しだけ上にある彼女の目を見つめながら思った。
ひとつひとつの仕草や言葉、彼女すべてをずっと自分の中に留めておけたらいいのに、と思う。
胸が苦しい。苦しくて胸が痛い。そして潰れそうだ。
潰れそうなくらい好きだと思った。



「九ちゃん・・・」
「・・・な、に」
「泣きそうな顔、してる」



彼女はまじまじとボクを見据えて、それから少し心配そうに微笑んだ。
そんな顔をしてるだろうか。ああ、そんな顔をしてるだろうな。
ボクは唇をぎゅうと噛み締めて、今まで見つめていた彼女の瞳から目を反らした。
彼女を愛するには覚悟がいると思ったけれど、たぶんこの感情はそういうことではないのだ。
たとえば彼女がボクと同じ感情を持っていたとしても、ボクは覚悟よりもっと重いものを背負わなきゃいけない。
叶わない想いを抱くということは、たぶんきっとそういうことだ。



(本当に、泣きそうだ・・・)



今度は本当に心配したようにボクの顔を覗き込む。
頬にそえられた彼女の手が、あまりにも優しくて振り払えなかった。



「九ちゃん」
「・・・妙ちゃん」



気をぬけば泣きついてしまいそうだった。
ぐらぐら揺れる。渦巻く。支配される。ボクを見てくれ。
言いそうになって、すかさずその言葉をのみこんだ。
この気持ちが罪なのか、それとも罪でない、のか
それが分からないからどうすればいいのかわからなくなる。



「どうしたの」

「どうも、しないよ」

「嘘をつかないで」

「嘘じゃない、よ」



彼女の手のひらは温かい。
頬からじわりと広がっていく温度がまた、ボクの息苦しさをひどくさせた。
このまま時間が止まればいい。そうしたら全部うまくいくかもしれない。
頭のすみでそんなことを考える。
ボクの様子を伺う彼女の瞳にうつった自分の姿を見て、確かに泣きそうだと思った。








好きで好きで たまらないんだ