まじわらない事を知っている





電気もなにもつけず真っ暗な部屋に、凍える空気が充満した。
畳を踏みしめるぎしりという音だけが部屋に響く。いつもなら出迎えてくれるはずの彼女が来ない。
彼女は珍しく机の上で身体をうつ伏せて眠っていた。



「妙ちゃん」



声を掛けるも応答がない。どうやら疲れているのか本気で眠っているらしい。
彼女と同じように机にうつ伏せて目を閉じて、机に手を伸ばす。
指先にひんやりとした感触、彼女の冷え切った手のひらに届いた。
彼女の手にくっつく自分の手のように、自分の頭から心臓からつま先から感情までぜんぶ、
君と繋がればいいなあと考える。
ぴくりと彼女の指が動き僕の手を握り返す。
震える、痺れる、電流みたいに、加速する熱がぐらりぐらり、ゆらめいて僕を惑わした。



「・・・妙ちゃん、寝ているのか?」



自分の声が鼓膜で振動する。じわじわ広がっていく音。
まぶたの裏側も真っ暗だった。
彼女の手のひらが僕の手のひらと重なり、それから何も動かなくなって、何も聞こえなくなって、
ただ、二人分の体温を噛み締めて忘れないように記憶へ刻んだ。


駆け巡る思考と理性がぶつかって酸化する。錆びていく。
始まりも終わりも永遠も共有したくて、規則的な時の流れを逆流するすべを知りたくて、
本当はもうずっと前からすべてが君で出来ているのに、込み上げるものが大きすぎて消化できない。
言葉の束縛が怖くて、もどかしくて、苦しくて、呼吸の仕方も忘れてしまいそうで、
見境なく溺れていたくて、惨めで、悲しくて、胸が軋んでる。










好きだよ、と、私の耳元で響いた彼女の声にいつまでも気づかないふりをした。
強さとか、弱さとか、男とか、女とか、そんな隔たり世界中から消えてなくなってしまえばいいのに。
本当は私だって彼女を愛したい。












さいごのほうのはお妙さんのセリフです。