現実は何時も虚しいと知っているはずだった。
悲しい想いをするのは何時も自分だと言う事も分かっているつもりだった。
なのに。
君があんまりはかなく笑うもんだから、すっかり忘れてしまっていたんだ。






願うよ。






暖かい背中に寄り添うのは心地よかった。
それはいけないことだとわかっていたけど、
僕には他に方法が見つけられなくて、知らないふりをしていた。




「妙ちゃん、今どこにいるの?」

「何言ってるの?九ちゃん。此処にいるじゃない」

「違う、心の話だよ」




きみは嘘を吐くのがとても下手だ。
一瞬だけ悲しい顔をしてすぐにえがおに戻る。
僕の目は誤魔化せないよ。誤魔化せたりするもんか。
だって僕程きみを想ってる奴なんて何処にもいないんだから。
どうして悲しい顔をするの。
僕は、こんなに近くに居るじゃないか。





「心の話って・・・、九ちゃん、カウンセラーにでもなりたいの?」





誤魔化した。本当はバレバレなんだけど、気付かないフリしててあげる。
だからそんな悲しい顔しないで。
本当は泣きたいんだって事位とっくの昔に気付いてる。
それでも言ってあげないのは、僕の前で悲しい素顔を見せて欲しくないから。
冷たい奴、って思われても構わない。
だから、憎むなら僕を憎むと良いよ。
遠い影ばかり追ってないで、背負っている重たい荷物を捨てると良い。
そうしたら見えなかった景色も見えるようになるさ。
例えば、そう、空とか。





「カウンセラー、ね」





そう思われても構わないよ。
僕が君の笑顔を取り戻したいのは本当だから。




「違うの?」

「ちょっと、違うけど」

「じゃあ、ちょっとはあってるんだ」




ふと零れたえみを受け止めたかった。
きたない方法でも君をわらわせる事が出来るなら、なんだってやってやる。
僕等には、きっとお互いの未来は見えていないんだろう。
眩しすぎる所為なのか、真っ暗な闇が続いている所為なのかはまだわからないけど、
どちらにせよ見えはしない。
背中あわせの僕等に、お互いの未来が見えるわけないんだ。
だけど、だけどね。
せめて君に笑顔が戻るように、僕はひとつだけ願ってみるよ。
君は何時までも輝きを失わないで。
その輝きで自分の道を照らしていてよ。
君の影にいる僕の闇が広がっても、決して後ろは振り向かないで。







例え暗闇が続いていても、これが僕の辿る道。









変えられない、帰られない、僕の道。










僕には、他に方法が思いつかない。