| 温もりをあなたに 肌寒いわね、と呟いてくしゃみを一つ。 くしゃみをした弾みで肩に掛けていた肌かけがずれてしまったので なおそうと俯いた瞬間に、隣にいたはずの九ちゃんがいなくなっていた。 「・・・え?九ちゃん?」 呼びかけにも彼女は答えず、辺りをきょろきょろと見渡しても彼女の姿は見当たらなかった。 まさか神隠しなんてものがあるはずもなく、人攫い?そんな彼女に限って そんなものに巻き込まれるわけがないだろう。 ぐるぐると思考していると頬に何か当てられて、瞬間に私は身を引いた。 「あっ、あつい」 「ふふ」 「九ちゃん!どこに行っていたの?」 「妙ちゃんが寒いって言ってたから。ね?」 「でも、急にいなくなっちゃうから心配したじゃない」 「あ、うれしいな。僕の心配をしてくれたんだ、妙ちゃん」 「もう、九ちゃん」 「ごめん、ごめん。ほら」 そう言って手渡された缶を受け取る。 手のひらの中で熱を持ったそれは、冷えた身体を少しずつ暖めてゆく。 「ホットコーヒーとか、ココアとかと思ったわ」 手の中にある缶をまじまじと見つめ呟くと、彼女の手が頬に伸びてくる。 「文句を言うのはこの口ですかー?」 「いひゃいわ」 ぴたりと頬をつまんでいた彼女の指が、そのまま動きを止める。 先程とは違う、真剣な瞳に引き付けられる。あっ、と思った。 「きゅうひゃん・・・」 絞り出した声。 一瞬の沈黙の後、ぷっと彼女が噴出した。 指がゆっくりと離れてゆく。 「な、なんで笑うのよ」 「え?笑ってないよ」 「嘘よ、今絶対に笑ったわ」 「なんで?笑ってないってば」 「へ、変な顔だと思ったんでしょう?」 「違うよ、違うって」 けして認めないくせに笑顔は端からこぼれ、彼女には止める気すらないように見えた。 むくれる一方の私を見て、ようやく九ちゃんが息を整える。 二度三度息を吐き、最後にひとつ溜め息をついて、それでも微笑みを崩さないでゆるやかに唇を開く。 差し込む淡い光できらきらと眩しい。 むくれた顔をようやく元に戻すと、彼女の顔を真正面から見て、すぐ後悔した。 「いや、可愛いと思って」 いとも簡単に息の根を止められたので。 いつの間にかぬるくなった、おしるこの缶を思わず落しそうになった。 寒い日はイチャイチャしていてください。 |
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