| 世界の片隅 九ちゃんは昔の様にまた家に遊びに来てくれる。 私はそれがとても嬉しかった。 二人とも黙って向かい合わせに座っている。 しんとした、部屋。 外から微かに聞こえてくる遊んでいる子供達の声。 風が吹いて木の葉を揺らす音。 全てを感じるために、今、ここに言葉はいらない。 けれど、向かいに座る九ちゃんとは、話したい。 私は紙を取り出し、なるべくこの空間を壊さないようにペンを走らせた。 九ちゃんは不思議そうにその様子を見るが、言葉は発しない。 『静かだね』 書かれた文字を見て、九ちゃんも机の上に置いたペンを持ち走らせる。 『ああ 本当だね もうすぐ夕飯の時間だ』 『九ちゃん』 『なに』 『ううん 何でもない ただ名前を書きたかっただけ』 九ちゃんのペンが数秒間、紙の上で動きを止め、再び動き出した。 『 妙ちゃん 』 私は紙から視線を上へ動かした。 九ちゃんと、目が合う。 言葉は、いらない。 すっと伸びてきた手が、私の頬を包んだ。 この後九ちゃんがお妙さんにキスしてくれたらなぁ。 九ちゃんを『彼』と呼ぶのか『彼女』と呼べばいいのか迷ってしまう。 やっぱり『彼女』でいいのか。 |
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