例えば、
彼の髪に触れるだけで、溢れてしまいそうになる涙とか。
彼の瞳に映った俺と、俺の瞳に映ったきみが重なった影とか。
彼の唇に唇を押し付けて、甘い甘い欲望に駆られてしまいたい夢とか。




全部、俺のわがままだから。






足りない、届かない






「なぁ、お願いでさぁ。俺と付き合ってくれよ」

「またそんな冗談ばっかり言って、いい加減にしてくださいよ」




彼を見つけるといつもこんなやり取りばかりしている。
ああ、これでもう何回目なんだろう。
いつまでたっても彼は、俺の言葉に耳を傾けてはくれない。





「考えても見ろィ、公務員と付き合えるなんざぁそうそうないですぜ?」

「何ですか、それ。僕はそんなことで人を判断しませんよ」





それは十分わかっちゃいるんだけど。
もう、切り札が俺にはないんだよ。





「全く、早く仕事に戻ってくださいよ。怒られちゃいますよ」





そう言って彼は俺とは反対の方向に行こうとして、くるりと
方向転換をした。
すれ違いざま、道に落ちていた小石に足をとられ彼は前につんのめる。
わ、と彼が声を上げるのと同時に俺は彼の腕をとっさに掴んだ。
前のめりになった彼の頭が至近距離にくる。
柔らかな彼の髪が頬をくすぐる。
そのまま自分の腕に取り込んでしまいたい。
そんな衝動に駆られた。





「あ、あのっ、ごめんなさい」

「いーえ、どういたしまして」





なんでもなかったように笑って見せた。
そう。
わかっているんだ。
全部、俺のわがままだから。






彼の髪に触れるだけで、溢れてしまいそうになる涙とか。
彼の瞳に映った俺と、俺の瞳に映ったきみが重なった影とか。
彼の唇に唇を押し付けて、甘い甘い欲望に駆られてしまいたい夢とか。






全部、
全部、俺のわがままだから。














片思い沖田さん。
あのSの沖田さんが片思いしてるってだけで
ご飯3杯は軽くいけそうです。