何気なく呟いた君の一言が
いつまでも胸に突き刺さっていて。






告げるつもりはないけれど







「山崎さんは、いい人ですね」





あー・・・
そう、そんな事言うんだ・・・。
もちろん君には悪気なんてなかったんだと思う。
僕の回りにいる人たちが、おかしいだけなんですけどね。と
困ったように笑う君。
眉は下がり、少しはにかんで何かを思い出すように。
チクリと胸が痛かった。




君が困った時や悩んでいる時は、僕がただ君の話を聞いてやって
時には慰めて、アドバイスしたりして。
側にいて少しでも君の励みになるんならって。
それで君が笑顔でいられるんなら、僕はそれでいいと思っていた。
僕を頼って来る君はかわいいと思うし、
君が笑ってるのを見ると僕も安心できた。





最近、君は旦那の話を僕によくしてくる
たわいもない事だけど君を想う僕にとっては正直きつかった。




「それでですね、銀さんてば・・・」

「ふーん、そうなんだ・・・」

「き、聞いてます?山崎さん」

「ん?ああ、もちろん」

「ほんとですか?」

「聞いてるよ、君の話。全部聞いてるよ」




僕はじっと彼の瞳を見つめる。




「そ、そうですか」




ぱっと頬を染め、照れたように目線をそらす。




「うん」

「あ、ありがとうございます」




けどね・・・、
僕はそんなに親切でもないし、君が思っているほどいい奴でもないんだ。
本当なら、無理やりにでも自分のものにしてしまいたい。
君の口から他の人のことを楽しそうに話してなんて欲しくない。
その笑顔は自分だけのものであって欲しい。
そんな事を思ったりもするんだ。




「いい人・・・、か」

「えっ?」

「いや、なんでもないよ」




押し殺した声は、きっと君には届かない。




「好きだ」と
その一言を言えば楽になるんだろうか。
この胸の奥にある焦がれる想いを君にぶつけてしまえば、
ありのままを君に伝えれば、こんなに苦しまなくても済むんだろうか。
それよりも、
それよりも。
今の関係を保っていた方がいいのだろうか。




君が安心していられる存在であれば






ただ
君がそれを望むのなら、僕はそれを演じればいいだけのこと。
たまに慰めて、たまに叱ってやって、物分りのいいふりをしていればいい。
君には笑っていて欲しいから。
その笑顔を何よりも大切だと思うから。







告げるつもりはないけれど
時々
どうしようもなく胸が痛くて苦しいんだ。