「なんで僕なんですか」





新八を誘って屋上に上がってきたのは三時間目の授業が始まる前。
数学の授業がつまらないという理由もあったが、彼にしてみれば
それは俺のわがままであって、道連れになったことにふてくされているようだった。




「まだ怒ってるんですかィ」

「そりゃあそうでしょう。意味もなくサボらされる身にもなってくださいよ」

「まあまあ、もう諦めましょうぜ」

「あんたが言うなよ、あんたが。ったく誰のせいだと、だいたいなんで僕なんですか?
 さぼる相手なら僕でなくたって他にもいるじゃないですかー」




山崎さんとか土方さんだって・・・とぶつぶつとぼやく彼を尻目に、青く澄み切った空を見上げる。
あ、飛行機雲。とぼんやり呟いた俺の言葉に「聞いてねぇのかよ」と呆れながらも同じように彼も空を見上げた。




「俺はアンタがいいんでさァ」




見上げたまま呟いた言葉に「へ?」という間抜けな返事が返ってきた。
飛行機雲はぐんぐん伸び、端からぼんやりと消えていく。




「たまにはいいかもですね」




振り返って彼が微笑む。太陽に反射した彼の顔がキラキラと眩しかった。
どうやら気が変わったらしい彼に目だけで笑って返す。
俺はアンタがいいんだ。同じ言葉をもう一度心の中でこっそりと呟いた。




隣で笑っているのも、呼吸を繰り返し同じ空気を吸うのも
喜びも、痛みも、ありとあらゆる俺にかかわる全てを、俺はアンタと共有したいんだ。





「新八あいしてるぜ〜」





そう言うと、彼は嘘くさいと言ってまた笑った。










(アンタじゃないと駄目なんだ)


















沖田さんに新八の事を「アンタ」と呼ばせたかっただけの話。
「アンタ」呼びなんか好き。